目 次
はじめに
一日約8時間眠るとすると、人生の約3分の1は睡眠時間です。睡眠は、疲れた心と体を休ませるために欠かせません。
毎日の睡眠、しっかりとれていますか?
「ぐっすり眠れた」「スッキリした」「疲れがしっかり取れた」といった感覚がない人は要注意です。寝ているはずなのに元気が足りないと感じるときは「質の良い睡眠」が不足しているときかもしれません。睡眠の質が低下すると、健康上の問題や生活に支障が生じることもあります。
また、最近の研究によると、仕事で最高のパフォーマンスを上げている人とそうでない人とでは、「睡眠の質」に違いがあると言われています。そのため、仕事とプライベートの両方を充実させるためには、睡眠の質を高めることが大切といえます。
そこで今回は、睡眠の質を高めるコツを紹介します。
たくさん寝ているのになんだかスッキリしない、目覚めが良くない。
それ、睡眠の「質」が問題なのかもしれません
睡眠の質が重視される理由
睡眠には、心と体の疲労を回復させるほか、記憶の定着やホルモンバランス、自律神経の調整、免疫力の向上、脳の老廃物の除去など、さまざまな重要な働きがあることがわかっています。
私たちの体にとって重要な「睡眠の質」が悪くなると、生活習慣病のリスクを高めたり、症状を悪化させたりするなど、健康上の問題や生活に支障が生じるおそれがあります。
しかし、睡眠の質の良し悪しを、自分で正確に判断するのは大変です。そんなときには、「ぐっすり眠れた」「スッキリした」「疲れがしっかり取れた」といった、主観的な感覚で判断して問題ありません。
睡眠不足がもたらすリスク
睡眠の質を追求する前に、そもそも睡眠時間が足りていない方もいるのではないでしょうか?
日本人の睡眠時間は、世界一短いといわれています。働く世代の平均睡眠時間を比較すると、ヨーロッパのほとんどの国で男女とも8時間を超えているのに対し、日本は男性が7時間52分、女性が7時間33分で、睡眠時間の短い人が多いというデータがあります。
睡眠不足は、生活習慣病の引き金になってしまうこともあるため、要注意です。
睡眠不足が続くと緊張状態を保つ交感神経が優位になるため、高血圧の原因になるとされています。また、睡眠不足は、血糖値の上昇を抑えるインスリンの働きを悪くするため、糖尿病の発症リスクを高めます。さらに、インスリンのほかにも食欲を調整するホルモンにも影響し、食欲を増大させるため、肥満にもつながると考えられています。
高血圧・糖尿病・肥満は、いずれも心疾患や脳血管疾患のリスクを高める「動脈硬化」の危険因子です。つまり、睡眠不足は狭心症や心筋梗塞などの心疾患、脳出血や脳梗塞などの脳血管疾患にもつながります。
睡眠不足が続くと、「うつ症状」が現れやすくなります。フィンランドの研究によると、十分な睡眠を取っている人と比べて、週5日不眠の人はうつになる確率が1.64倍、週2~4日不眠の人は1.46倍になると報告されています。
適切な睡眠時間は人それぞれ異なりますが、平日と休日を比較し、休日に1時間半以上長く寝ている人は、慢性的な睡眠不足の疑いがあるかもしれません
睡眠の質を上げるコツ5選
生活リズムを整える
人の身体には、太陽の昇沈や四季の巡りといった自然のリズムに呼応した「生活リズム(生体リズム)」が刻まれています。体内時計(主時計・末梢時計)が備わっていることで、日中は活動モード、夜は休息モードに自然と切り替わるようになっているのです。
体内時計は約24時間10分と言われており、1日の時間(24時間)と若干ズレています。たった10分と思うかもしれませんが、1週間だと1時間以上、1ヶ月だと4時間以上もズレが大きくなってしまいます。このズレを放っておくと生活リズムが乱れてしまい、身体に不調をきたす恐れがあるので、1日ごとにリセットする必要があるのです。
朝、太陽の光を浴びると体内時計の「主時計(親時計)」を目覚めさせることができますが、あらゆる臓器や筋肉などに備わる「末梢時計(子時計)」には光が届きません。末梢時計に影響を与えるのは食事なので、栄養満点の朝食をとって末梢時計を目覚めさせましょう。
なお、太陽の光を浴びてから朝食をとるまでの時間は、開きすぎないほうがいいと言われているので、どちらも時間を決めておくといいかもしれませんね
夕食は就寝3時間前
布団に入るときは、体も心もリラックスした状態を作っておきたいもの。胃の中に食べ物が残っている状態だと、胃腸が消化のために働き続けてしまうため、「ノンレム睡眠」に入りづらくなってしまいます
就寝の1時間前に入浴する
前述したように、深部体温が下がると眠くなるため、入浴習慣をつけるのもおすすめです。シャワーでも身体を温められますが、湯船につかることで身体をゆっくりと温めることができます。前述したように、質の高い睡眠には熱放散が関係しています。入浴すると深部体温が高まり、放熱のために血管が開きます。四肢から熱が逃げて深部体温が下がるので、寝つきやすくなるのです。
入浴は、遅くても就寝する1~2時間前には済ませておきましょう。38~40度のぬるめのお風呂は副交感神経を優位にするため、心身がリラックスして寝つきが良くなります。ゆっくりと体温を上げることで末梢血管が広がり、手足からの熱放散がスムーズになります。手足や足首を伸ばすといった軽いストレッチをすれば、より寝つきが良くなるはずです。
なお、忙しくてシャワーで済ませている方、土地柄的に湯船につかる習慣がない方には足湯がおすすめです。深めの容器に39~42度ほどのお湯を張り、ふくらはぎの下までつかってください。
就寝直前には食事を摂らない
就寝直前の食事は禁物です。食べてすぐ寝てしまうと、身体は消化にパワーを使うため内臓の休息時間が短くなり、眠りが浅くなったり疲れがとれにくくなったりします。
胃に入った食べ物が消化されるまでには、3時間ほどかかります。就寝時には消化が終わっているのが理想的なので、寝る3時間前には食事を終えておきましょう。どうしても食事が遅くなってしまう場合は、消化の良いものを少量食べるようにしてください。
なお、カプサイシンを含む食べ物は深部体温を上げるのに効果的ですが、就寝直前に食べると深部体温が下がりにくくなります。寝つきが悪くなるので注意しましょう
眠るための準備をする
寝る前にはスマートフォンやパソコン、ゲーム画面やテレビなどを見ない
スマホやパソコンなどの電子機器が放つブルーライトは太陽の光に近い性質のため、脳が時間を誤認識して、覚醒してしまうことがあります。寝る前にスマートフォンを触るのが日課という人も多いかもしれません。しかし、寝る前に強い光を目に入れたり、脳が興奮する情報に接したりすると、睡眠の質が低下します。
カフェインとアルコールを避ける
コーヒーや紅茶など、カフェインが入っている飲み物を就寝前3~4時間以内に飲むと、睡眠の質が下がったり、途中でトイレに起きたりすることがあります。眠る時に必要な副交感神経の働きを鈍くするカフェインや、アルコールを分解するためにアセトアルデヒドが発生するアルコール類を飲むことは控えましょう。
眠る前に軽くストレッチや深呼吸をする
体の血液循環を良くするストレッチは、深部体温をスムーズ下げる効果があります。また筋肉の緊張をほぐす効果もあるので、体がリラックスして、深い眠りにつきやすくなります。深呼吸も副交感神経が優位になり、質の良い睡眠の導入に効果的です。
アロマオイルを使う
自律神経を整えるラベンダーや、ストレスを和らげ前向きな気持ちに導くオレンジ・スイートなど、自分にとって心地よい香りを使うとより効果的。アロマオイルをティッシュに1、2滴しみこませ、枕元に置いておくだけでもいいでしょう。
寝つきをよくする音楽を聴く
リラックスしているときは、脳波がα波という波長になっています。α波に切り替えるには、リラックスできる音楽を聴くのがいいでしょう。眠る1時間前から音楽を聴き始めて、眠る時には睡眠の邪魔にならない音量にするか、音を止めましょう。ヒーリングミュージックと呼ばれる、副交感神経が優位になる音楽はリラックス効果が期待できます。川や海などの水のせせらぎ、クラシック音楽など気に入ったものを見つけてみましょう。
まとめ
深い睡眠を得るためには、眠る前に心も体もリラックスしていることが大切です。仕事や家事でストレスを受けた心身を、お風呂やストレッチ、音楽などでリラックスさせてから布団に入ることで、質の高い睡眠につながります。睡眠の質をあげるコツを活用し、睡眠負債を貯めないように工夫してみてはいかがでしょうか。
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