勤務間インターバル制度とは〜企業側にも労働者側にもメリットしかない〜

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目 次

はじめに

「勤務間インターバルをご存知ですか?」

『勤務間インターバル』とはその名の通り、当日の勤務と翌日の勤務の間にインターバル(連続休息時間)を確保するための制度。実はこの制度2019年4月に施行された働き方改革関連法により、勤務間インターバル制度の努力義務が規定されましたが、制度の内容を把握していない人もまだまだ多いのが実情です。

この記事では、勤務間インターバル制度の概要について紹介します。

ちょこぶら
ちょこぶら

勤務間インターバル?

初めて聞いたなぁ。

この記事はこんな方におすすめ

☑︎勤務間インターバル制度について知りたい方

☑︎会社で人材を管理する立場にある方

☑︎会社の生産性に悩んでいる方

勤務間インターバル制度とは

「勤務間インターバル」制度とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保するものです。

日本では、長時間労働による過労死やメンタルヘルスの悪化が社会問題化しています。

2021年7月、厚生労働省は20年ぶりに過労死認定基準の見直しをおこなっていて、過労死の要因の一つとして「勤務間インターバルがおおむね11時間未満」という内容を追加しました。

「勤務間インターバル」制度を導入した場合、例えば下図のような働き方が考えられます。

この他、一定時刻以降の残業を禁止し、次の始業時刻以前の勤務を認めないことなどにより「休息期間」を確保する方法も考えられます。

勤務間インターバル制度が導入された背景

勤務間インターバル制度が導入された背景には以下の4点があります。

  1. 時間外労働の問題
  2. ワークライフバランスの推進
  3. 過労による離職
  4. 労働市場のグローバル化

①時間外労働の問題

昔から「日本人は働きすぎ」といわれるように、時間外労働の増加が背景にあります。長時間労働が原因で健康面に支障を来たす場合も多々。最悪の場合、過労死という結果になってしまいます。

状況を打開するため、勤務間インターバル制度を設けて労働者の環境を整えようとしている企業が増加しているのです。

②ワークライフバランスの推進

健康面の確保に付随し、十分な休息時間を与えてワークライフバランスを整えるのも、勤務間インターバル制度を導入した背景にあります。

残業で長時間働く場合、一定の休息時間が確保できる勤務間インターバル制度を導入すると、ワークライフバランスを保てます。働いたぶんしっかり心身を休める時間が確保されるのです。

③過労による離職

過労による離職の増加も背景のひとつにあります。長時間労働が避けられない労働環境から抜け出そうとして離職する労働者は後を絶ちません。中には過労死する人もいるほどです。

離職に至らないまでも、体や心の健康を損ねて休職してしまう可能性も懸念されます。勤務間インターバル制度は、このような長時間労働による離職を抑止する目的もあるのです。

④労働市場のグローバル化

日本だけでなく海外の労働力が増加した点も、勤務間インターバル制度が導入された背景のひとつ。近年、グローバル化やIT化が進み、外国人の労働力を雇うのも珍しくありません。

これを機に日本の働きすぎという今までのスタイルを捨て去り、日本人だけでなく今後も増え続ける海外の労働力に対して働きやすい環境を提供するのも目的です。

EU諸国では勤務間インターバルを義務化

欧州連合(EU)では1993年に「EU労働時間指令」を制定し、すべての労働者に対して、24時間につき最低連続11時間の休息期間を付与することを定めました。EU諸国はこれに基づき、国内法を定めることが義務化されている。ここでは、欧州における取り組みについて、ドイツ、フランス、イギリスの現状を見ていきます。

①ドイツ
「労働時間法」第5条第1項で、労働者は一日の労働時間の終了後、原則として最低11時間の休息時間をとることが規定されている。確保できない場合は、代替日に繰り越すことができる。

②フランス
「労働法典」L3131-1条で、労働者は2労働日のあいだに少なくとも連続11時間の休息時間をとる権利を有することが規定されている。確保できない場合は、代替日に休息時間を繰り越すことができる。

③イギリス
2020年にEUを離脱したイギリスだが、労働時間指令の国内法である「労働時間規則」第10条で、労働者は、少なくとも11時間継続した日ごとの休息時間を与えられなければならないことが規定されている。確保できない場合は、労働者が取得できなかった休憩時間に相当する「補償的休憩」期間を提供しなければならない。

いずれの国も管理職や軍隊、警察など、立場や職種によって除外が認められる特例はあるものの、最低11時間の休息時間をとることが定められている。また、確保できない場合は、繰り越しや補償が必要とされる。

国が休息時間の確保を義務付けることで、ワークライフバランスのとれた働きやすい環境づくりの大きな一助となっているのは間違いありません。

日本国内における導入状況

日本国内でも、普及に向けた動きは進んでいます。2018年6月29日に成立した「働き方改革関連法」に基づき改正され、2019年4月1日に施行された「労働時間等設定改善法(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法)」では、勤務間インターバルを確保することが事業主の努力義務として規定された。しかし、厚生労働省が国内の民間企業4127社から回答を得た「平成31年就労条件総合調査」では、2019年1月時に勤務間インターバルを導入していた企業は3.7%、導入を予定または検討している企業は15.3%と、依然として導入率が低い現状が明らかになっています。

そこで国は、2021年7月30日に、過労死を防ぐための国の対策をまとめた「過労死等の防止のための対策に関する大綱(過労死等防止対策大綱)」の改定版を閣議決定した。新たな大綱では、勤務間インターバル制度の導入促進を掲げ、2025年までに同制度を「知らなかった企業割合を5%未満にする」こと、「導入している企業割合を15%以上にする」ことを設定した。今後さらに、周知と導入支援に力を入れる考えだと思われます。

勤務間インターバル制度を導入するメリット

そもそも、勤務間インターバル制度にはどのようなメリットがあるのでしょうか。企業側、労働者側、それぞれで次のようなメリットが考えられます。

①企業側のメリット
・働き方改革推進支援助成金が受けられる。
・企業価値やイメージの向上につながる。
・従業員の健康とワークライフバランスが確保できる。
・残業代や電気代などの必要経費を削減できる。

②労働者側のメリット
・生活時間や睡眠時間を確保でき、ウェルビーイングの向上につながる。
・ワークライフバランスを保ちながら働き続けられる。
・会社に対する満足度の向上につながる。
・所定外労働時間(残業)の減少につながる。

③企業側および労働者側のメリット
・生産性、やる気の向上につながる。
・離職率の低下につながる。

勤務間インターバル制度の導入方法

勤務間インターバル制度を導入しようとする企業に向けて、導入の手順を紹介します。

1. 従業員の労働時間を把握する

はじめに、従業員の労働時間を把握することが大切です。「どれほど従業員が働いているのか」「実際問題勤務間インターバル制度を運用できそうなのか」を把握してからでないと、制度を導入しても十分な効果が得られない恐れがあります。

タイムカードの数字だけを見てしまうと、サービス残業をしている従業員を取りこぼしてしまうため注意が必要です。サービス残業の実態がある場合は、正確な実態を把握することを意識しましょう。

2. 勤務間インターバル制度の種類を選ぶ

次に、勤務間インターバル制度の種類を選びましょう。勤務間インターバル制度には以下の3つの種類があります。

  • 新規導入:9時間以上の勤務間インターバルを新設する
  • 適用範囲の拡大:すでに休息時間を9時間以上確保している企業が、対象者を拡大する
  • 時間延長:すでに休息時間を9時間以上確保している企業が、休息時間を2時間以上延長する

導入する種類を決めたら、実際に制度の設計を行ない、業務に支障をきたさないかをシミュレートしてみます。現場社員の意見も聞きながら、具体的な運用方法を考えてていきましょう。

3. 就業規則を見直して運用を開始する

最後に、決定した勤務間インターバル制度の運用方法を就業規則に落とし込みます。しっかりとルールを規定してから導入しないと制度が形骸化してしまう恐れがあるため、具体的に規定を作成しましょう。

就業規則には、以下のような内容を記載してください。

  1. 確保すべき休息時間
  2. 適用対象者
  3. 適用期間
  4. 制度適用時の始業時間や就業時間、休憩時間

厚生労働省では勤務間インターバル制度に関する就業規則定例を紹介しているため、参考にしてみてもいいでしょう。運用方法については法令による規制はありませんので、自社に合わせて運用しやすいルールを設定しましょう。

まとめ

  • 勤務間インターバル制度とは、勤務終了後〜翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間を設けることを目的とするもの。
  • 厚生労働省では、9~11時間以上のインターバルの設置を推奨している。
  • EU諸国では勤務間インターバルが義務化されている
  • 日本では勤務間インターバル制度はまだ努力義務であり、導入は企業判断
  • 勤務間インターバル制度の導入は企業側および労働者側の双方にメリットがある。

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