目 次
はじめに
「公務員だって副業したい!」
そうお考えの方もきっと多いはず。
選択肢の中で”せどり”を候補に挙げる方も多いはず。しかし、公務員のせどりについても注意点があります。
この記事では公務員のせどり、特に”古物商許可”について解説します。
この時代公務員だって副業したいよぉ〜
そもそも古物商許可とは?
古物商許可は、古物の売買・交換・貸借(料金発生)をビジネスとして行う場合に必要な許可です。
古物とは?
単に中古品だけではなく、販売業者以外の一般消費者の手に一度でも渡ったものであれば、例え未開封品であっても古物に含まれます。
このため例えば『特定のゲーム機の未開封が安く出品されているから、もっと釣り上げて転売しよう!』は、未開封品であっても一般消費者の手に渡っているので、古物商許可が必要なケースです。
古物は13種類に分類されていますが、フリマアプリで扱われるような物品は、ほとんどいずれかの分類に該当します。
これらをまとめると、『フリマアプリで購入したものは、全て古物である』と考えたほうが良いでしょう。
古物商許可が不要なケース
では、フリマアプリは許可なしに一切使えないのか?というとそうではありません。
次のような場合には、古物商許可は不要です。
- 所持品を売る(仕入れた古物は不可)
- 販売業者から新品を買って売る
- 無償でもらった物(譲渡・懸賞等)を売る
- 国外で買い付けたを物を売る(国内輸入業者からの転売は不可)
古物商許可申請の手続方法
古物商許可の申請手続きは、管轄の警察署を通じて各都道府県の公安委員会に対して行います。
必要なもの
- 古物商許可申請書3種(都道府県公安委員会)
- 略歴書(都道府県公安委員会)
- 誓約書(都道府県公安委員会)
- 住民票(市区町村)
- 身分証明書(市区町村)
- 登記されていないことの証明書(法務局)
- 申請手数料又は収入証紙19,000円(要確認)
- 身分証(パスポート・運転免許証・保険証等)
- 印鑑
公務員でも古物商許可の申請ができるのか?
(許可の基準)
第四条 公安委員会は、前条の規定による許可を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、許可をしてはならない。
一 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
二 禁錮以上の刑に処せられ、又は第三十一条に規定する罪若しくは刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百三十五条、第二百四十七条、第二百五十四条若しくは第二百五十六条第二項に規定する罪を犯して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることのなくなつた日から起算して五年を経過しない者
三 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
四 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第十二条若しくは第十二条の六の規定による命令又は同法第十二条の四第二項の規定による指示を受けた者であつて、当該命令又は指示を受けた日から起算して三年を経過しないもの
五 住居の定まらない者
六 第二十四条第一項の規定によりその古物営業の許可を取り消され、当該取消しの日から起算して五年を経過しない者(許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の期日及び場所が公示された日前六十日以内に当該法人の役員であつた者で当該取消しの日から起算して五年を経過しないものを含む。)
七 第二十四条第一項の規定による許可の取消しに係る聴聞の期日及び場所が公示された日から当該取消しをする日又は当該取消しをしないことを決定する日までの間に第八条第一項第一号の規定による許可証の返納をした者(その古物営業の廃止について相当な理由がある者を除く。)で、当該返納の日から起算して五年を経過しないもの
八 心身の故障により古物商又は古物市場主の業務を適正に実施することができない者として国家公安委員会規則で定めるもの
九 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者。ただし、その者が古物商又は古物市場主の相続人であつて、その法定代理人が前各号及び第十一号のいずれにも該当しない場合を除くものとする。
十 営業所(営業所のない者にあつては、住所又は居所をいう。以下同じ。)又は古物市場ごとに第十三条第一項の管理者を選任すると認められないことについて相当な理由がある者
十一 法人で、その役員のうちに第一号から第八号までのいずれかに該当する者があるもの
古物営業法
そのため申請自体はできます。
しかし申請が取れたところで、六ヶ月以内に営業を開始できなければ許可の取消しの対象となります。
(許可の取消し)
第六条 公安委員会は、第三条の規定による許可を受けた者について、次に掲げるいずれかの事実が判明したときは、その許可を取り消すことができる。
三 許可を受けてから六月以内に営業を開始せず、又は引き続き六月以上営業を休止し、現に営業を営んでいないこと。古物営業法
ですので、公務員を辞めるつもりは無く、とりあえず将来のために古物営業許可を取得しておこうといったような考えで取得の申請を行うと、仮に古物営業許可が取れたとしても取消される恐れがあります。
そもそも公務員は副業禁止です。
公務員の副業は法的に禁止されている
そもそも公務員は営利目的となる副業が禁止されており、違反すれば何らかの懲戒処分を課せられます。
メルカリやブックオフで自宅の不用品を販売するのであれば営利目的に該当しないので問題ありませんが、明らかにせどり・転売と判断される行為となれば処分対象です。
国家公務員、地方公務員各々で副業禁止の根拠があるので解説します。
国家公務員は原則せどりは禁止されている(国家公務員法)
国家公務員の副業禁止については、以下の国家公務員法第103条で定められています。
【国家公務員法第103条】
職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
② 前項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。
※国家公務員法より抜粋
国家公務員がせどりをしたら、国家公務員法違反に該当してしまうのです。
これは、国家公務員は、「国民全体の奉仕者として、公共の利益のために全力を挙げて専念しなければならない」とされているためです(国家公務員法第93条)。
報酬の有無があるかどうかは関係なく、例えばせどりで在庫を多く抱えてしまい赤字になったとしてもNGとされてしまいます。
※内閣官房内閣人事局「国家公務員の兼業について」より抜粋(2019年3月)
所得20万円以下なら確定申告が不要なのでバレる可能性はほとんどありませんが、仮にバレたら処分対象になるので注意しなければいけません。
ただ、第103条2項の記載を解釈すると人事院の承認を得れば副業が可能とも読み取れます。
しかし、人事院の資料を確認すると自営業に該当するビジネスで承認が得られる職種は、「不動産の賃貸」「太陽光発電の販売」「農業」などに限定されることがわかります。
※人事院の資料より抜粋
また同様の資料では、以下のようにせどりについて明確に禁止しています。
つまり、国家公務員でいる限りはせどりを行うことはできないのです。
おれは国家公務員で、せどりで稼いでいるけど何も言われていないよ。
という人がいても、ただ単にバレていないだけであり、今後発覚した際は何らかの懲戒処分が課されるものと考えられます。
地方公務員も原則せどりは禁止されている(地方公務員法)
地方公務員の副業禁止については、地方公務員法が根拠になります。
【地方公務員法第38条】
職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。
2 人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。
※地方公務員法より抜粋
地方公務員法を読み解くと、非常勤職員や臨時職員といった、一般企業でいうパート・アルバイトに該当する人であれば副業は容認されることがわかります。
また、正規の職員についても、任命権者の許可が降りれば副業が可能と読み取れますが、国家公務員と同様に許可の基準が問題です。
許可基準は、各自治体の個別の運用によって実施しており、独自にガイドラインや指針を作成している自治体もあります。
しかし、認められる副業は、国家公務員と同様の「不動産の賃貸」「太陽光発電の販売」「農業」などの他、以下のような地域貢献活動に限定されているのが実態です。
※公益財団法人 東京市町村自治調査会「公務員の副業・兼業に関する調査研究報告書」より抜粋
このことから考えると、地方公務員についても、ほぼ100%せどりが禁止されていると考えていいでしょう。
公務員は古物商許可が取りにくいからせどりが難しい
公務員のせどりは、国家公務員法、地方公務員法に抵触する行為であることがわかりました。
そうか、だったら副業がバレないようにせどりをするしかないだろう。
と割り切ってせどりをしようと考えている方もいるかもしれません。
その場合は、バレた際のリスクを認識して自己責任で行っていただくしかないのですが、公務員がせどりをする際に問題となるのが古物商の許可です。
中古品(古物)を販売する際は古物商許可がないと、電脳せどり、店舗せどりいずれもできません。
古物商許可は、最寄りの警察署に申請しないといけないのですが、公務員の場合は申請が通らない確率が高いのです。
いや、法律で公務員が古物商の許可が取れないなんて、どこにも書いていないじゃないか。
たしかに、古物営業法第4条(許可の基準)の条文では公務員の古物商許可については触れられていません。
つまり、公務員が古物商許可が取ること自体は違法ではありません。
しかし、副業自体が国家公務員法、地方公務員法違反になることを理由に、警察署が許可しないのです。
警察署が、法律違反になるようなことを許可しないのは自然なことです。
だからといって、古物商の許可なくしてせどりや転売を行えば古物営業法違反になる可能性が高くなります。
そういうことから考えると、公務員がせどりを行うのは極めて難しいと考えた方がいいでしょう。
【まとめ】公務員の副業は自己責任で
公務員の方は、国家公務員法、地方公務員法に抵触するので、副業でせどりをすることができません。
また、古物商の許可を申請しようとしても、警察署がなかなか許可を出さないでしょう。
そのため、公務員の方が副業をするなら、古物商許可が不要なメーカー仕入れをおすすめします。
ただし、メーカー仕入れに関しても公務員は副業禁止であることには変わらないので、以下のことに十分注意して、必ず自己責任で行ってください。
なお、開業届やマイナンバーカードで副業がバレることはないのでご安心ください。
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